相続対策としての民事信託について

 ご自身の相続財産を「誰にどのくらい残したいか」予め決めておきたい場合、遺言を残すことが有効です。

遺言についてはこちら

 一方、遺言では対応できない遺産の残し方をしたい場合、民事信託を使うことにより、ご希望をかなえることができる場合があります。そこで本ページでは、民事信託を使った相続対策の説明をさせていただきます。


民事信託を使った相続対策とは

 遺言では「誰にどのくらい財産を残すか」ということを決めることができますが、次のようなことはできません

・まず相続人Aに遺産を引き継がせて、A死亡後はBに引き継がせたい  相談例1をご覧ください

・遺産を、毎月一定額ずつ給付するようにしたい →相談例2をご覧ください

 このような希望をお持ちの場合、民事信託を使って希望を叶えることができる場合があります。下記に相談例を掲載いたしますので、ご参考にしていただければ幸いです。


相談例1 後妻と前妻の実子がいる場合

【相談例】

 相談者長野太郎は先妻との間に長男がいるが、先妻とは10年ほど前に離婚している。その後長野太郎は後妻と再婚した。後妻との間に子供はいない。

 後妻と長男の仲はあまり良くないので、後妻と長男との間で養子縁組をすることは期待できない。

 相談者長野太郎は、自分の死後、後妻が存命の間は後妻に自宅不動産を利用してもらいたいが、後妻が亡くなった後は、長男に自宅不動産を利用してもらいたい。

民事信託を使って二次相続を指定する方法

【遺言や民法の規定に基づけばどうなるか】

・長野太郎が「全財産を後妻に相続させる」旨の遺言を残した場合、不動産は後妻が相続します。

・しかしながら、長男は後妻の相続人でないため、後妻が「長男に不動産を遺贈する」旨の遺言を残さない限り、長男は不動産を取得できません。相談例の場合、後妻と長男の関係が良くないため、後妻が上記のような遺言を残してくれる可能性は高くありません。

・また、長野太郎は「後妻死亡後の相続(二次相続)」について遺言で指定することもできません。


【民事信託を使った解決策】

・民事信託では、受益者が利益を受ける権利(受益権)を自由に移転させることができます。

・この仕組みを使うことにより、
 ①長野太郎が存命中は長野太郎を受益者
→②長野太郎が亡くなった場合は後妻を受益者
→③後妻が亡くなった場合は長男が受益者
というように受益権を移転することにより、不動産の利用者を事前に指定することができます。

民事信託の概要についてはこちら

【注意点】

・長野太郎の相続人は後妻及び長男となりますので、民事信託で長男の遺留分を侵害するような遺産の配分(例:後妻が全ての財産の受益者になるような配分)をした場合、長男は遺留分の請求を行う可能性があります。

・そこで、本例の場合、長野太郎が亡くなった際に一定程度の遺産が長男に相続されるようにしておく等、長男への配慮も検討しておくことをお勧めします。

関連ページ:遺留分

 


相談例2 相続人に浪費者がおり、一度に多額の遺産を持たせたくない場合

【相談例】

 相談者長野太郎は長女と長男がいる。二人に均等に遺産を残してあげたいが、長男が浪費者で、一度に多額の遺産が入った場合、それを適切に管理できるか心配である。

 例えば、長男の遺産については毎月一定の金額を給付していくような形にできないだろうか。

民事信託を使い遺産を毎月一定額支払う方法


【民法の規定に基づけばどうなるか】

・長野太郎さんの死亡後、遺言があれば原則遺言のとおり遺産は全額一括で相続されますし、相続人の間で遺産分割協議が整えば当該協議のとおり遺産は全額一括で分配されまず。いずれにしても「毎月、一定額ずつ遺産を支給する」というようなことはできません。


【民事信託を使った解決策】

・民事信託では、契約等の定めにより、管理する財産を「毎月、一定額ずつ受益者に支給する」ことができます。

・また、民事信託では受益者が利益を受ける権利(受益権)を自由に移転させることができます。

・そこで、委託者兼当初受益者を長野太朗、受託者を長女、二次受益者を長女及び長男(受益権は均等割合)としておきます。そして、長男については「受託者(長女)が、毎月一定額の金額を給付する」こととしておきます。

・民事信託の概要についてはこちら