相続の事前準備①遺言

 専門家の立場からみた際、相続の手続きを進めていくと、「亡くなられた方が遺言を残しておいてくれれば・・・」と思う場面が多々あります。

 しかしながら、一般の方にとって「遺言を書く」という行為は、決して気軽なものではないということも事実です。

 そこで、本ページをご覧いただき、「遺言とはどんなものか」「遺言はどんな場合に書いた方が良いか」「遺言にはどのような種類があるのか」等について説明させていただきます。

 本ページをきっかけに、多くの方が遺言について興味・関心をお持ちいただければ幸いです。


【本ページの目次】


遺言とは

 人が亡くなると、その財産等は亡くなった人の相続人が引き継ぐことになります。ところで、民法はこの引き継ぎ方を、亡くなる前に自分で決めておくことが出来る制度を設けました。

 この制度こそが「遺言」というわけです。

 一般的に遺言は「遺産をどのように引き継がせるか」という、財産の事項についてのみ残せるものと思われがちですが、「子の認知」や「未成年後見人の指定」等の一定の身分行為の事項についても、遺言で残すことができます。


遺言を残した方が良い場合

 「遺言を残した方が良い場合とはどのようなときか?」というご質問をいただくことがあります。

 一般的に遺言を残した方が良い場合は下記のとおりとなります。

  • 相続人たちの仲が疎遠になってしまっている場合
  • 以前の配偶者との間にも、現在の配偶者との間にも子供がいる場合
  • 相続人が兄弟姉妹の場合
  • 遺産を相続人以外の人にも残したい場合
  • 相続人に判断能力が欠ける方(認知症の方)や行方不明の方がいる場合

 

なぜ、上記の場合は遺言を残した方が良いのか、詳しい内容は下記サイトをご覧ください。

・「遺言を残した方がよい場合 5選」はこちら


遺言の種類

 遺言は下表のとおり、7種類があります。

  方式 遺言の種類 概要
普通方式 自筆証書遺言 遺言者が全文、日付及び氏名を自書し、これに押印する遺言
普通方式 公正証書遺言 2人以上の証人の立会いを得て遺言者が公証人に趣旨を口授し、公証人がこれを筆記し遺言者及び証人に読み聞かせ、遺言者、証人及び公証人が署名押印する遺言
普通方式 秘密証書遺言 遺言者が、遺言者又は第三者が書いた遺言書に署名押印し、その証書を封じて証書に用いた印章で封印し、公証人1人及び証人2人以上の前に封書を提出し、遺言者、証人及び公証人が封紙に署名押印する遺言
特別方式(緊急時遺言) 一般緊急時遺言 疾病等で死亡の危急に迫っている者(遺言者)が、証人3人以上の立会いのもと、遺言の趣旨を口授し、口授を受けた証人の1人がこれを筆記する。そして遺言者と他の証人に読み聞かせ、内容が正確であることを承認した後、各証人が署名押印する遺言。
ただし、本遺言は遺言の日から20日以内に、証人の1人又は利害関係人から家庭裁判所に請求し、その確認を得る必要がある。
特別方式(緊急時遺言) 船舶遭難時遺言 船舶遭難の場合において、死亡の危急に迫っている者(遺言者)が、証人2人以上の立会いをもって口頭でする遺言。
本遺言は証人がその趣旨を筆記してこれに署名し、印を押し、かつ証人又は利害関係人から遅滞なく家庭裁判所に請求し確認を得る必要がある。
特別方式(隔絶地遺言) 伝染病隔離者遺言 伝染病のため行政処分により交通を隔離された場所にある者が、警察官1人及び証人1人以上の立会いをもって作成する遺言。
特別方式(隔絶地遺言) 在船者遺言 船舶中にある者が、船長又は事務員1人及び証人2人以上の立会いをもって作成する遺言。

 このなかで、実務上、主に使われるのは、太字になっている「自筆証書遺言」と「公正証書遺言」の2種類です。

 そこで、本サイトでは「自筆証書遺言」と「公正証書遺言」の2種類の遺言についての詳しい説明をさせていただきます。

・「自筆証書遺言」の詳細はこちら

・「公正証書遺言」の詳細はこちら


遺言執行者とは

 遺言執行者とは、遺言に書かれた内容を実現するため、その手続きを行う権利を持つ者です。

 「遺言を残したのはいいけれど、それを実現するための手続きは誰が行うのだろうか」というご質問を良く受けますが、信頼できる相続人や弁護士・司法書士等の専門家を遺言執行者として指定しておくことで、遺言執行者が遺言の内容に従い、各種手続きを行ってくれます。

 当事務所にて遺言のご相談をいただく場合には、相続手続きをスムーズに進める観点から、遺言執行者を指定するようお勧めしております。

遺言執行者の指定の仕方

 遺言執行者は、次の3通りの方法で指定できます。

  • 遺言にて遺言執行者を指定する方法
  • 遺言にて「遺言執行者を選ぶ人」を指定し、「遺言執行者を選ぶ人」が遺言執行者を指定する方法
  • 家庭裁判所に遺言執行者を指定してもらう方法

 

遺言執行者になれない人

 「未成年者」及び「破産者」は遺言執行者となることができません。

遺言執行者の義務

 民法上、遺言執行者は遅滞なく財産目録を作成し、相続人に交付しなければならないとされています。

2019年7月1日法改正

 法改正により、遺言執行者はその任務を開始した際に、遅滞なく遺言の内容を相続人に通知するよう、義務化されました。